『Zettai-Mu presents DEF JUX JAPAN TOUR』@BAY SIDE JENNY 8/24

23:00を少し過ぎた頃、無事に潜入。そして間もなく、噂が入っているだけで全くの未聴未見のため、実はこの日一番楽しみにしていた土俵ORIGINのステージが始まった。DJ KANAMORIが神秘的とも云える激アブストラクトな音を響かせていると、二度目の変声期を迎えている最中のような、青くハスキーな声が乗っかってきた。RINOを彷彿させる鋭く突き刺さるフロウ。姿を現したINDENはどこにでも居そうなシンプルな少年Bスタイルで、無闇に客を煽ったりせず、キャップを深くかぶり、頬を赤く染めながら黙々とラップを始めていった。その言葉は素晴らしくタイトにビートに絡められ、所々の語尾を伸ばす独特のアクセントを持ち、時に祈るように、時に聞き手に訴えかけるように、または自問自答するかのように深い闇を徘徊した。そして終盤、SIXTOOのビート上で殆どポエトリー・リーディングのようなー詞の内容は人間の存在理由の領域にまで踏み込んでいたー内省のライムが吐き出された頃には、オーディエンスも彼の世界にドップリとハメられていたハズ。彼がステージを去った後、パラパラと薄く長く続いた拍手が印象的。個人的には「人は人、自分は自分…」というラインがチョーク気味に胸に入った。
次は1945。パーティーによってスタイルを柔軟に変化させる彼らだが、この日は絶妙なアブストラクト・ブレイクビーツ中心のセット。KURANAKAが放出するビートは、いつものように音の波、または“圧”となって聴覚よりも胸を打ちつけ、DJ ARIの指スキルがサイケ色を増幅させ、非常に純度の高い“踊る空間”を作り上げる。が、残念な事に反応する人は数少なく、傍観者の影が。まぁ、DEF JUXに備えて温存してるんだろうけど、地蔵化もどうかと思う。
緩急の流れを見事にキメた壇上の二人が姿を消すと、その地蔵ヘッズ連もゾロゾロとステージ付近に押し寄せて来た。次はDEF JUXクルー。
歓声と共にガタイの良い奴らがステージに揃う。まずは、Aesop Rock, Mr.Lif, Cannibal Ox, DJ Cip という陣容。マイクを握る4人はもうそこに居るだけで圧倒的な存在感を放ち、フロアは瞬時にその熱量に飲み込まれた。それぞれの持ち歌を代わる代わる披露する形のラフなステージング。キャニバルの二人はそのクソデカイ図体(極太と細長)の割には少し控えめな感じ。エイソップは以外にも非常に表情豊か。リラックスした様子で特性の低い声質を鳴らした。DJ シップはジャグリングの見せ場でスニーカーを使用してフェーダー操作。これに苦笑いしてたのが、個人的に一番ヤバイと思ったミスター・リフ(ドレッド眼鏡)。率先してオーディエンスを操り、少し場が間延びすると“Make Some Nooooise!!!!”と休ませない、休まない。何が良いってあの知的で人の良さそうな表情。ニヤリとしながらBボーイスタンスを連発しててクソ格好よかった。
地下熱で沸騰したショウも中盤に入ると、レジェンズのMursが登場し、一段と場が沸く。相変わらず「ナーニーナーニー」を好んで使ってて笑えた。『24hrs.w/a G』の為に両足首にバネを埋め込んでおいたのに、この日は不発。最近のを2〜3曲歌ったところで遂にEL-P(故・フロウ)が参戦。やはり異常に盛り上がる。EL-Pはやっぱりどこか病んだ、危うい雰囲気を醸し出していた。サウスパークに出てきそうなショボい悪党団のボスのような装いなのに不思議。日本語を要求され「スシ…エダマメ…」等の単語を絞り出したあと「I'm a STUPID American!」とか言ってたのはかなりオモロかった。「俺、あんまり曲持ってないんだよ」と宣い、Co-Flowの『Population Control』等のクラシックを数発カマし(バネはここで使用)、更にヒューマン・ビートボックスでMr.Lifにビートを提供するなどしてEL-Pガスを蔓延させ、結果オーディエンスは発熱し、濃ゆいクルーの熱いショウは異様なテンションのまま、無事、終演に漂着した。