彼岸、深淵

さて、どうしたものか。何か言い落とした事はないか。おそらくは何もない。その逆もまたしかり。そもそもだ、そもそもこの醜態である。弱さ。永遠の弱さ。引力を従えた夜空の闇のやうな、あの何物かだ。生活に潜む影。いや、生命。何もない。これは真理である。誰も触れようとしない真理。他人を分析することは酷く愚かな行為である。ふと気付くだろう。己にさえ留まらない、かの実体。己に煩い、人に煩い、季節に煩い、謎を残し全ては消えて行くのだ。死と戯れる危険分子が見える。そこに一本の寂光が射している。命と運命と人間である。所詮。その程度の事だ。冷たい廊下を歩いて行く。安息の暗闇が背中を押す。影。無。また出た。付属する虚無、頽廃。私は呪うことさえ忘れてしまった。誰に説き伏されることもない。誰が、誰が私を知るというのだ。誰をも信じない。想念の海に沈むこと。運命の闇を見つめること。誇らしきこと。我執。手段。手段。手段。