BUCK-TICK

ノクターン -Rain Song-」(作詞・作曲:今井寿
今井寿の書く詞といえば、単語羅列・語彙センス・語呂合わせ・言葉遊び・シュール・イメージ・パズル・メタファーといった、感覚的だが内実緻密且つトリッキーな手法を用いた表現を想起するだろう。リスナーは無意味の裏に意味を隠し、意味の裏に無意味を潜ませるようなコトバの配置に振り回され踊らされる。幸か不幸か答えはいつも見つからず、思考は止まらない。
そんな中で、今作「ノクターン -Rain Song-」から得られる効能は趣を異にする。頭脳的だとか思考回路だとか、そんな面倒臭いもんじゃなくて、直に胸にクる感じ。かと言って感情的、でもない。胸を締めつけられる感じ。他の最適を探せば「恋」が最も近いかもしれない。電子音とアコースティック・ギターによって編まれるサウンド・スケープにはマイナス・イオンが満ちるが、まるで落着かせない(所謂そわそわする、という感じ)雨の麻薬感もまた満ち満ちる。櫻井敦司の妖気懸かった気怠さに吉田美奈子スキャットが共鳴し狂気は生まれる。やはりベタとも言える濃ゆく甘ったるい(まさに確信的な)メロディー・ラインは「今井寿の才能」などという安直で迂闊な批評は古過ぎて適当ではなく、それはもはや「性癖」という言葉に収斂されていく(べき)だろう。そして言葉の方では今までの作風を逆手に取ったかのように、クルっと手の平を返したかのように、悶々とした心象風景をえげつないほど詩的に描写(または吐瀉)した。
剥き出しの意識(末那識・阿頼耶識)。
想いは無常。

夜がはみ出して 惑星が裏返る
君は夕暮れに 沈む 炎

僕は雨に 這いずる銀色
濡れた迷路で 探してる

Palala.......